2012-01-28

ドブラックナーフェンの肖像 / 茂木大輔

茂木大輔 著「オケマン大都市交響詩 オーボエ吹きの見聞録」の中の掌編。

小説? スケッチ、と呼ぶのがぴったりだ。
音楽とオーケストラへのいとおしさを、絵筆と絵具にして描かれたスケッチ。

ある男、作曲家であり指揮者である男の姿がさらさらっと描かれている。
冗談で設定されたドブラックナーフェン氏にまつわる、魅力的なエピソード。

淡々とした文章の向こうからユーモアがほんのり香ってくる。
ニヤッとさせられつつ、音楽に満たされる幸福も伝わってくる。
こんな指揮者のもとで演奏したらドキドキわくわくするだろうねえ…


2012-01-01

砂漠 / 伊坂幸太郎

無人島に一冊だけ本を持って行くとしたら、何を持って行く?

ありがちな問いだ。
そんな問いを見かけるたび、反射的に「サン=テグジュペリの『人間の土地』」と思う。

『砂漠』に登場する西嶋君は『人間の土地』に思い入れをもっている。だから同志みたいな気がしなくもない……ホントか? うーん…?

高校生の時に読んで以来、『人間の土地』に最愛賞を贈呈している者としては、西嶋君の(あるいは伊坂さんの?)読みかたにはちょっと違和感がある。当然だがわたしとは違うので。
まあ人それぞれだ。

伊坂幸太郎さんの小説はほとんどが気持ちよく読めるが、『砂漠』はとくに。西嶋君が仮想同志かもしれないから…というより、主人公の大学生たちに共感をおぼえてしまうから。
この本を読んでいると、今まさに過ぎてゆく時というものが、あたたかく大切に感じられる。