ケストナーの作品には楽しい前書きがよくあるが、この作品の前書きもおもしろい。前書きだけで三つもある。
ドイツの青年が、やっかいな法律のせいで無一文の状態になってザルツブルグへ行き、きれいな娘さんにコーヒーをご馳走になったら・・・どうなったか? もちろん恋が始まった。
ところが・・・ という話。
モーツァルトのオペラ・ブッファが好きな人ならきっと楽しめる。伯爵とか女中とか、こっそり隠れるとか変装とか、モーツァルト・オペラを思わせる人物や仕掛けがちりばめられている。
別の面から見れば、この物語の主人公はザルツブルグという街だ。
ザルツブルグへ旅したとき、直前にこの本を読んでいたのだった。読んだとおりの姿の街が、文字から想像した以上の風情で現れて、あの街が好きになったのだった。
この本を読む時は、かたわらにコーヒーとモーツァルト・クーゲルがあると良いな。