2013-03-12

あんずの花の匂う夜 / 鵜崎庚一・田中冬二

“匂うてくる” と歌う瞬間がとても美しい。澄んだ香気が立ちのぼる。

短い歌だ。
大きな古い家、暖色のランプの光のなかで、みんながいる。
というだけの。

やわらかく少し揺らぐ和声は、ランプの火の揺らぎなのか、みんなの笑い声の揺らぎなのか。
それぞれが心の中に抱えるものを持ちつつ、みんなでいることに安らいでいる、その揺らぎなのか。
揺らぎ漂っている響きがすっと焦点を結び、星が見える。空気があんずの香りになる。

いまこの歌を歌うなら、鎮魂の思いがこもるのではないか。
みんながいる。